積立を『続ける』技術。相場が下がった日に何もしないのがなぜ正解になりやすいか、そして出口の話【第3弾】
前回までで箱(NISA)と中身(インデックスファンド)の話は済んだ。今回は一番むずかしい「続ける」の話。暴落の日に何が起きて、何をしちゃいけなくて、いつ・どうやって使うのか。これから子どもが生まれるうちの考え方も一人称で。
前回の記事までで、NISAという箱の話と、その中に入れるインデックスファンドの話をした。ここまで読んで口座を開いて、積立の設定をしたら、あとは自動で毎月引き落とされていく。正直、ここまでは誰でもできる。
問題はそのあと。積立でいちばんむずかしいのは「始めること」じゃなくて「やめないこと」だと思う。今回はその話。制度の説明と商品の中身は前の2本で書いたので繰り返さない。
相場が大きく下がった日に、何が起きるか
積立を何年か続けていると、必ず「大きく下がる日」が来る。数年に一度は、数か月で2〜3割くらい評価額が減ることが過去には何度もあった(これは過去の話で、次がいつ・どのくらいかは誰にも分からない)。
そのとき、家計に起きることを順番に書く。
- 1. スマホのアプリを開くと、評価額が真っ赤になっている。 「いま売ったら、これまで入れたお金より少ない」という状態。
- 2. ニュースが騒ぐ。 テレビもネットも「〇〇ショック」「歴史的暴落」と煽ってくる。台風が来るときの報道と似てて、不安をかき立てる作りになってる。
- 3. 周りが売り始める。 職場や友達の間で「もう引き出した」「やっぱ投資って怖いね」という話が出てくる。SNSでは「今すぐ全部売れ」と「今こそ買い増せ」が同時に流れてくる。
ここで大事なのは、評価額が減ったことと、損が確定したことは別だということ。売らなければ、それはまだ「値札が下がっている」状態でしかない。値札はまた変わる。変わらないと約束はできないけど、変わりうる状態のまま持っている、というのが正確。
やってはいけないこと3つ
慌てて売る
これが一番痛い。下がったところで売ると、「値札が下がった」が「損した」に確定する。しかも、売ったあとに戻り始めても、もう持っていないから恩恵がない。過去の大きな下げ相場では、底からの戻りが一番大きかった数日を逃しただけで、成績がガラッと変わることが知られている。「いつ戻るか」を当てるのは、プロでもまず無理。
積立を止める
「今は怖いから、落ち着くまで止めておこう」。これ、一見慎重に見えるけど、実は積立の一番おいしい部分を捨てている。理由は次の章で書く。
下がったからと一気に買い増す
逆に、「今が底だ!」とボーナスや貯金を突っ込むのも危ない。底だと思ったところからさらに下がることは普通にある。そもそも生活防衛のお金(後で書く)を投資に入れてしまうのが一番まずい。
共通しているのは、どれも「相場を読んで動こうとしている」こと。積立は相場を読まないための仕組みなのに、いざ下がると読みたくなる。人間だから仕方ない。だからこそ「何もしない」を先に決めておく。
「定額で買い続ける」の効き方を、仕組みとして
なぜ止めない方がいいのか。仕組みで説明する。ここに出す数字は説明のための仮の数字で、実際の値動きの予想じゃない。
投資信託は「1口いくら」で買う。毎月同じ金額を入れると、
- 値段が高い月 … 買える口数が少ない
- 値段が安い月 … 買える口数が多い
こうなる。たとえば毎月1万円入れて、1口の値段が1万円の月は1口、5千円に下がった月は2口買える。安いときほど自動的に多く仕込むことになる。
ガソリンを「満タン」じゃなく「3千円分」で入れている人なら、もう体感していると思う。安い時期は同じ3千円でたくさん入るし、高い時期は少ししか入らない。値段を見て判断しているわけじゃないのに、勝手にそうなる。積立はこれと同じ。
つまり、相場が下がっている時期というのは、積立をしている人にとっては「同じお金でたくさん買える時期」でもある。ここで積立を止めると、安く買えるチャンスだけ逃して、高い時期に買った分だけが残る。
もちろん、これは「下がったあとに戻る」ことが前提の話。戻らなければ安く買った分も減ったままだし、元本を割り込むこともある。将来の値動きは誰にも約束できない。ただ、「戻るかどうか分からない」中で、「下がったときにも同じように買い続ける」のが、当てにいかない人の取れる一番まともな作戦、というのが積立の考え方。
仕組みの整理は金融庁の「資産形成の基本」 ↗がわかりやすい。
何もしないのが正解になりやすい理由
「何もしない」が強いのは、次の3つが重なるから。
- 1. 売らなければ損が確定しない
- 2. 買い続ければ安い時期に多く仕込める
- 3. 相場を読まないので、読み間違いが起きない
逆に言うと、暴落の日に何かしようとした時点で、この3つのどれかを手放している。
「何もしない」を実際にやるコツは、アプリを開く回数を減らすこと。毎日見ると毎日不安になる。積立の設定さえしてあれば、見なくても買われている。うちは、見るのは年に数回くらいでいいと思っている。
それから、下がったときに何をするか、上がっているうちに決めておくこと。「下がったら何もしない」と、冷静なときに紙に書いて冷蔵庫に貼っておくくらいでちょうどいい。台風の備えと同じで、来てから考えると判断を誤る。
そのために、投資に入れちゃいけないお金
「何もしない」ができる前提がひとつある。投資したお金を、急に引き出す必要がないこと。
暴落の月にたまたま車の修理代がかかって、仕方なく売る。これが一番もったいない。沖縄は車が2台ないと回らない家も多いし、台風のあとには修理や買い替えの出費が来る。夏場の電気代も本土より重い。旧盆や清明祭の出費も毎年ある。こういう「必ず来る出費」を投資から出す状態にしてはいけない。
順番としては、
- 1. 生活防衛のお金 … 生活費の数か月分は、普通預金にそのまま置いておく。相場と関係なく引き出せる場所に。
- 2. 数年以内に使うと決まっているお金 … これも投資に入れない。理由は次の章。
- 3. その上で余ったお金 … ここだけを積立に回す。
積立額は「これなら暴落しても止めなくて済む」金額にしておくのがコツ。無理して大きくすると、いざというとき止めるか売るかするしかなくなる。
出口の話 — いつ売るのか
積立の記事は「始め方」ばかりで、「終わり方」があまり書かれていない。ここは少し丁寧に書く。
「相場がいいから売る」じゃなく「使う時期が来たから売る」
売る理由は相場じゃなくて、自分の人生の予定にする。教育費、住宅、老後、そのお金が要る時期が来たから売る。「高くなったから売る」を始めると、それは相場を読む行為になって、また当てにいく罠にはまる。
全部一度に売らなくていい
これが意外と知られていない。積立を「毎月少しずつ買う」でやったなら、出口も「毎月少しずつ売る」でいい。取り崩しながら使う、という発想。
一気に売ると、その日の値段で全部が決まる。たまたま下がった月に全部売ったら目も当てられない。少しずつ売れば、買うときと同じで値段が平均される。証券会社によっては「毎月〇円分を自動で売る」設定ができるところもある(サービス名は会社によるので、自分の口座で確認を)。
NISAの場合、売った分の枠は翌年に戻ってくる。これは前回の記事で書いたとおり。だから「一部だけ売って、残りは持ち続ける」がやりやすい。
使う時期が決まっているお金は、投資に入れない
ここが一番大事かもしれない。
- 子どもが高校・大学に入るときの教育費
- 家の頭金
- 数年後に買い替える車の代金
こういう「使う時期が決まっている」お金は、その時期に相場が下がっていたら困る。使う時期を相場に合わせてずらせないから。
積立の強みは「下がったときに待てること」なのに、期限があるお金は待てない。だから、使う時期が近づくにつれて、投資の割合を減らして預金に移していくのが基本の考え方。目安として、使う数年前には投資から外しておく人が多い。何年前がいいかは決まりがないので、自分が「この時期に減ってたら困る」と感じる年数で決める。
逆に、老後資金のように「まだ何十年も先」のお金は、いちばん長く待てるので、積立に向いている。
何年でいくらになるかを試すなら、金融庁のつみたてシミュレーター ↗やライフプランシミュレーター ↗がある。ただし利回りを入力して計算する仕組みなので、出てくる数字は「その利回りで回ったら」という仮定の話。約束の数字じゃない。
うちはどう考えているか
うちは共働きで、まだ賃貸で、これから子どもが生まれるところ。つみたてNISAは毎月少しずつやっている。建売の購入もそろそろ考え始めていて、家の頭金と子どもの出費と老後、この3つをどう分けるかを最近よく話す。
今のところの整理はこう。
- 家の頭金 … 使う時期がわりと近いので、投資には入れない。預金で貯める。
- 子どもにかかるお金 … 生まれてすぐ要る分は預金。大学のころの分は、まだ十年以上先なので、積立の一部として考えている。ただし入学が近づいたら預金に移す。
- 老後 … 一番遠いので、これは積立のまま放っておく。下がっても見ない。
実は、以前けがで手術・入院したことがあって、そのとき高額療養費制度に助けられた一方で、当時は医療保険に入っていなくて後悔した。あの経験があるので、「急な出費は必ず来る」というのは体で分かっている。だから生活防衛のお金は投資と完全に分けている。暴落の月に入院しても、積立を売らなくて済む状態にしておく。それが「何もしない」を続けるための土台だと思っている。
NISAについては、よほどのことがない限り触らないと決めている。下がった日も上がった日も、やることは同じで、何もしない。動かすとしたら、それは相場が理由じゃなくて、家を買う・子どもの進学が近づく、という暮らしの予定が理由のとき。
まず何からやるか
- 1. 生活費の数か月分が普通預金にあるか確認する。 なければ、積立を増やす前にそっちを先に。
- 2. 数年以内に使うと決まっているお金を書き出す。 頭金、車、教育費。それは投資に入れない。
- 3. 積立額を「暴落しても止めなくて済む額」に見直す。 無理してたら減らしていい。
- 4. 「下がったら何もしない」と決めて、どこかに書いておく。 夫婦なら2人で共有する。
- 5. アプリを見る回数を減らす。 積立は見なくても動く。
- 6. 出口は「使う時期が来たら、少しずつ売る」と覚えておく。
制度の細かい部分は年度で変わることがあるので、最新は金融庁のNISA特設サイト ↗で確認を。
始めるのは簡単で、続けるのがむずかしい。でも続けるためのコツは、相場を勉強することじゃなくて、「相場と関係なく暮らせる家計」を先に作っておくことなんだと思う。
この記事は 2026-09-21 時点の情報です。制度や金額は年度で変わります。手続きの前に、住んでいる市町村の窓口や公式サイトで最新の内容を確認してください。